アメリカの良心

アメリカから戻って8年以上がたつが、いまだにホワイトハウスからメールが届く(From the White House )。

今朝も差出人のところに「President Barak Obama」という名前が刻まれたメールがきていた。もちろん本物のホワイトハウスからのメールであるが、私一人に出されたものではなく、多くの人に同時に配信されたメールだ。

内容は故エドワード・ケネディがオバマに個人的に送った手紙を紹介するものだった。エドワード・ケネディは1964年に暗殺されたジョン・F・ケネディの 弟で、2009年8月に脳腫瘍で他界している。

手紙は亡くなる3カ月前の5月12日にオバマに宛てて書かれたものだった。今朝、届いたメールにはその手紙がそのまま添付されていた。

内容はアメリカの国民皆保険(オバマケア)についてだった。アメリカにはそれまで日本のような国民皆保険がなく、健康保険に入っていない国民は4500万人以上もいるといわれていた。

政治家として、すべての国民に健康保険を提供しようと考えることは当然だろうし、一国のリーダーとしての使命であるとも思われる。1912年にセオドア・ルーズベルトが実現しようとした時からの懸案でもある。

しかし保守派の人間は徹底的に反対してきた。自由診療が受けられにくくなるばかりか、自分たちの税金が低所得者の保険に使われたくないなど、理由はいくつもあった。

ケネディが手紙を書いた時点でオバマケアはまだ法律になっていなかった。ケネディは国民皆保険の実現に向けて 尽力していたリーダー的な政治家だったが、法律が誕生する10年3月をまたずにこの世を去るのだ。

手紙の一節を抜粋したい。

「・・・いよいよ(オバマケアが法律になる)最終段階を迎えたのだと思っています。法律になると確信しています。ただ、法案が署名される時に、たぶん私はその場にいられないでしょう。けれども、あなた(オバマ大統領)こそが、アメリカ社会が長年待ち望んだ改革を実現できる大統領だと思っています。国民皆保険を実現させることが、私が政治家になった原点でした。そして政治家をつづけるエネルギーであり、力だったのです。きっと長年の夢はかなうと思っています・・・」

ケネディとしては法律が施行させる瞬間をどれほど見たかったことか。

なぜオバマがこの手紙を今になってメールに添付したのか。

日本時間10日午前1時頃から、オバマがテレビで国民皆保険について話をするからだ。だが、ケネディはもうそこにはいない。(敬称略)

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by the White House

2009年、ホワイトハウス内でオバマ大統領と語りあうエドワード・ケネディ